ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズを開催、受賞者が決定

2021年10月5日(火)にオンラインで開催した「ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズ」では、医療・バイオテクノロジー分野の起業家、スタートアップ企業、大学研究者などの10名により、創薬分野の革新的なアイデア・プロジェクトのプレゼンテーション・コンテストが行われました。国内外のベンチャーキャピタル、支援家、アカデミアやベンチャー企業から多くの視聴者がオンラインで参加する中、再生医療、眼科疾患、希少疾患などに関連するテーマやペプチド、抗体、核酸などの多様なモダリティに関連する新規創薬技術などが紹介されました。
厳正なる審査の結果、アンメットニーズに革新的なアプローチによる治療法を開発中の株式会社セルージョン(羽藤 晋氏)の『iPS細胞由来内皮細胞を用いた角膜再生医療』が第1位を受賞しました。また、第2位には、株式会社aceRNA Technologies (須川 史啓氏)が、第3位には、株式会社スコヒアファーマ(森藤 雄亮氏)が選ばれました。さらに、視聴者の投票により、ミラバイオロジクス株式会社(加藤 益弘氏)にオーディエンス賞が贈られました。受賞者には、賞金として、第1位に 200万円、第2位に130万円、第3位に70万円、オーディエンス賞に10万円が授与されます。

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【受賞者のコメント】
第1位
『iPS細胞由来内皮細胞を用いた角膜再生医療』
株式会社セルージョン 代表取締役 羽藤 晋氏

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この度は、ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズ2021で発表の機会をいただき、誠にありがとうございました。ご登壇された皆様の事業はどれも大変すばらしく、私共にとって非常に刺激となりました。また、その中から弊社を第1位に選んで頂き、大変光栄に存じます。
弊社は、独自の分化誘導技術により他家iPS細胞から角膜内皮代替細胞を安定的に大量生産する技術と、既存の角膜移植手術と比較して各段に侵襲性が低くかつ簡便な細胞移植技術を組み合わせることにより、全世界の角膜失明患者様へ角膜移植に置き換わる新しい再生医療を提供することをミッションにしております。
現在は、国内開発と海外開発を並行して進めており、今回の受賞を機に、事業開発や会社の成長に並走していただける方や事業会社様、投資家の方との出会いの機会が得られましたら幸いです。ご興味がございましたら、お気軽に是非お声がけください。

第2位
『スマートmRNA医薬による生体内細胞制御・リプログラミング』
株式会社aceRNA Technologies 経営戦略部 部長 須川 史啓氏

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この度は、ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズ2021にて、多くの革新的な取り組みの中から第2位のご評価を受けたこと、大変光栄に存じます。まだアーリー・ステージのベンチャーですが、患者さんにとって価値のある治療法の開発に貢献すべく邁進してまいります。
aceRNA Technologiesでは、京都大学・齊藤博英教授が行われている合成生命システム研究の蓄積で生まれたRNAデザイン技術を基に、細胞状態に応じた治療ができる“スマートmRNA医薬”の実現を目指しています。体内で、疾患細胞を正常細胞にリプログラミングする、あるいは特定の細胞種を他細胞種にリプログラミングするといったin vivo cell reprogrammingによる新しい治療の実用化を目指していきます。
今回のイノベーション・プライズ受賞を機に、本技術の社会還元をご一緒できるパートナー企業とお話できることを求めております。

第3位
『IP6K阻害薬の高リン血症治療への展開』
株式会社スコヒアファーマ 創薬研究所 副所長 兼 事業開発部 サイエンティフィックフェロー 森藤 雄亮氏

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この度は高い評価をいただきありがとうございました。弊社は生体レベルでのリン制御におけるIP6Kの役割を世界で初めて解明し創薬への応用を試みており、SCO-006は臨床応用を目指す初めてのIP6K阻害薬です。弊社はSCO-006に加えて複数の医薬品候補を保有し、そのすべてにおいてあらゆる方向性でのパートナリング活動を推進しています。弊社ホームページを参照いただきぜひお声がけください。

オーディエンス賞
「大環状ペプチドのファーマコフォアをラッソグラフト化することで多機能なタンパク質を得る」
ミラバイオロジクス株式会社 代表取締役社長 加藤 益弘氏

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弊社はLassoGraft Technology® を用いて、バイオ医薬品創薬に革新をもたらしています。この度多数の聴衆の方々からオーディエンス賞を頂いたことは、当社技術に対する皆様からのご期待の大きさを物語っていると思います。弊社にとっても大変嬉しく、光栄なものです。皆様からのご期待に応えるべく、また患者さんに弊社発の医薬品を一日でも早く届けられるよう、全社一丸となって研究開発を推進してまいります。

【審査員のコメント】
ファーマ・ビジネスコンサルタント 櫻井 満也氏
ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズ2021の発表企業の多くは、新規モダリティ医薬品創製のためのプラットフォーム技術を持ち、まさに、日本のアカデミアの研究力の高さが反映していると思います。ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズが、アカデミアでの研究に留まらず、前向きに事業化を推進するプログラムとして定着し、さらに進化してゆくことを期待しています。

Medicinal Creation Advisor 代表社員 小泉 信一氏
例年にも増して非常に優れたアイデアが示されたイベントだったという感想です。一方で、そのイノベーションをサポートするデータが必ずしも明確ではなく、サイエンスレベルでのエビデンスが必要と思えるプロジェクトもありましたが、今後の課題として進めていただきたいと思っています。受賞された3件は、細胞、核酸、低分子とそれぞれ異なるアプローチですがこれらのアプローチは今後も医薬品の研究開発で重要な役割を持つものだと思います。各チームの今後の発展をお祈りします。

ベーリンガーインゲルハイム グローバル事業開発・ライセンス部門ヘッド イオアニス・サポウンヅィス(Ioannis Sapountzis)
第三回ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズは素晴らしいイベントとなりました。日本における本イベントはグローバルに推し進める草の根プログラムの基礎であり、毎回日本のサイエンスの奥深さと活力に感動しております。また本日私たちが目にしたプロジェクトは新薬の発見と開発に大きな進歩をもたらし革新的な治療を患者さんへ届けることになるでしょう。受賞者の皆様おめでとうございます。皆様のアイデアが育ち大きな成功を収めることを願っています。

今回のイベントでのピッチ発表は下記になります。

[ピッチプレゼンテーション]

Order Company/institution name Presentation title
1 MiraBiologics Inc. Lasso-grafting of macrocyclic peptide pharmacophores yields multi-functional proteins
2 Epitope Science Co., Ltd Generation of functional antibodies focusing on epitopes
3 HikariQ Health Inc. Coiled Q-body technology
4 Red Arrow Therapeutics Inc. Development of pH-responsive prodrug systems for safe and efficient delivery of therapeutic proteins
5 Cellusion Inc. Corneal Endothelial Regenerative Medicine with iPSC derived Endothelial Cells
6 aceRNA Technologies Co. Ltd. In vivo cell reprogramming therapy by smart mRNA
7 BTB Drug Development Research Center Co., Ltd. RECTAS - a novel, multi-purpose pre-mRNA splicing modulator for rare intractable diseases
8 Shimane University, Faculty of Medicine A Novel Treatment for Bilirubin-Induced Neurological Dysfunction (BIND)
9 SCOHIA PHARMA, INC. Inhibition of inositol hexakisphosphate kinase for the treatment of pathological hyperphosphatemia
10 ACurx Inc. Gene therapy for patients with retinitis pigmentosa and age-related macular degeneration

ベーリンガーインゲルハイム・イノベーション・プライズ2021の概要はこちら